合同会社かわうち屋 代表職務執行者
川内での生活はとても充実しており、やりがいを感じる
私は現在、「株式会社あぶくま川内」の取締役営業部長と「合同会社かわうち屋」の代表職務執行者を兼任しています。
震災当時、私は東京でアパレル関連会社の営業を勤めていました。震災当日も伊勢丹立川店にて商談をしている最中に地震が発生し、ものすごい揺れだったため外に避難しました。駅前の大画面テレビに震災の様子が映し出され、津波の生中継と共に仙台市内の映像が流れ、飛行機が流されている光景をみんなが食い入るように見ていました。仙台市は7年間転勤生活を送った場所でもあり、様々な思い出が詰まっていたので、とてもショックでした。
当日は電車が動かなくなってしまったため自宅に帰れず、ホテルを取ろうにも満杯で宿泊できなかったため、朝まで居酒屋をハシゴしましたね。
私が川内村に移住してきたのは2016年です。私は青森県育ちだったため、何らかの形で被災地の助けになりたいとずっと思っていたんです。そんな折、30年間務めた会社で私が担当していたブランドが、国内でのライセンス契約を終了することとなり、そのタイミングで早期退職を決断したのが2013年のことです。その後NPO法人が募集していた被災地復興支援員にエントリーしたのですが、私は書類選考で落とされたんですよ。当時被災地が必要としていた人材は土木建築や電気通信、医療などが主だったため、アパレルで営業をしていた自分のスキルは何の役にも立たないんだと考え、その後、どこで何をやっても生活していけるようにと、様々な資格取得に励んだんです。
そんな生活を続けていた2014年、先に川内村でNPOの活動をしていた、大学時代から付き合いのあるラグビー部の先輩から川内に来ないか?というお誘いを受け、同年5月から5か月間「かわうちの湯」で働くことになったんです。
かわうちの湯では朝7時から温泉の清掃をし、10時からフロントに立つ毎日を過ごしました。5か月間で体重が8㎏減るくらいハードな毎日でしたね (笑)しかし、村の人や従業員の人たちとも仲良くなれて、とても充実した日々を送ったな。と実感しました。
その後も村の人たちとSNSで繋がっていて、また川内に来ない?とお声をかけていただき、2016年より同村へ移住しました。
私が現在管理等を任されているのは「かわうちの湯」を始め「いわなの郷」や「ビジネスホテルかわうち」「あれ・これ市場」や「YO-TASHI」など、多岐にわたります。その一環として商品開発にも携わっており、当初いわなの郷ではいわなの塩焼きや燻製しかなかったところに品目を増やし、お土産として購入していただこうと、女性にターゲットを絞り商品開発を進めました。縁あって宮城県石巻市にて津波被害に遭いながらも再建を果たした「山徳平塚水産」さんとつながりができ、両社がコラボレーションした商品として「いわなのアヒージョ」と「いわな贅沢ごはん」が誕生しました。これらの商品はネット販売も実施されており、リピーターも多く大変好評です。
写真左:蕎(キョウ) 写真右:蕎麦畑(ソバガルデン)
このほかにも村の特産品として、川内村産酒米「夢の香」を使用した純米吟醸「歸宴(かえるのうたげ)」の販売や村内の蕎麦を使用した2種類のビールも展開しています。これら3種の酒類は販路を広げようとは思っておらず、“川内村でしか買えない”と付加価値をつけるため、ネット販売もせず、村内の商店以外では購入できないようにし、ブランド化を図っています。
だからこそ、村に来てくれた人がまた来たいと思えるような村づくりをすることが大切だと思っているんですね。そのためには、村の観光施設をもっと魅力的なスポットにしていかなければいけないと考えています。お客様を夢中にさせたり、喜んでもらうためのおもてなしの精神というのは前職の営業経験が大いに活かされると思います。今の仕事はとても大変ではありますが、やりがいはめちゃくちゃあります。これからも沢山の人が村に来たいと思えるような、魅力的な村づくりをしていきたいですね。
川内村に移住して丸3年が過ぎました。私は現在、妻と愛犬と共に暮らしています。村での生活は首都圏で長年生活していたため、病院やスーパーなどが遠く不便さを感じることもありますが、それ以上に楽しいことが多いかな。
犬の散歩をしていると、近所の人が野菜をくれるんですよ。自宅に帰るころには散歩に行ったはずなのにスーパーの帰りのような状態になることも良くあります。それまで野菜は買うものだと思っていたのが、今では小さいながらも家庭菜園を始め、“野菜は作るものだ”という考えになりました。そして、自宅の畑で出来た野菜を近所の方に配るようになりました。そういった近所のコミュニティって、本当に大事なんだなと、川内村に来て実感しました。
私は正直、今の仕事は村のためにやっているとは考えていません。復興財源に頼ることなく、村自体はもちろん、村の皆さんが自分たちの足で歩いていける環境などを作り、村が発展するための一助になればという思いで動いています。これからも自分ができることは精一杯取り組んでいきます。
編集・写真:S/T
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