船迫ふなば 一枝かずえ さん | 浪江町

船迫ふなば 一枝かずえ さん | 浪江町

六角茶屋社員
出身:浪江町

心の中では、不安半分、楽しみ半分

震災当時、私は勤めていた和食店の六角茶屋の仕事を早めに切り上げ、大堀地区にあった美容室に居たときに地震が起きたのね。地震がおさまったあと、残っていた従業員が心配でお店に行こうとしたんだけど、道路が通行止めだし電話もつながらないから、とりあえず自宅があった幾世橋に帰ったの。私の実家や親せきの家は海のすぐそばにあって、震災前から「何かあったら高台にある私の家に逃げよう」って話し合ってたからみんな集まってきてて、そこで家族の無事は確認できてほっとしたのを覚えてる。

自宅は停電してたし水も出なかったから、その日の夜はみんな六角茶屋で一晩過ごして、津島や川俣に避難した後、私と主人は娘のいる神奈川に向かったの。娘は3月11日に里帰り出産で福島に帰ってくる予定だったから、転院先の産院探すのにも凄い苦労したんだよー!

着の身着のまま避難したから何も持ってないし、住む場所も仕事も探さなければいけない状態だったとき、神奈川県の職員さんに出会って、松田町役場で臨時職員として採用してもらい、今も主人と二人で仕事をさせてもらってるんだけど、2018年4月にはリフォームが済んだ浪江町の自宅に戻ってくる予定です。

最初は娘や息子が住む神奈川県にこのまま住もうと思って家も買ったけど、浪江町で私のお父さんが新しく建設される「水産工業団地」で営業を再開するって聞いたから、私の弟に「従業員どうするの?」って聞いたら「誰も居ない」って言われて、自分たちもお手伝いしなければいけないなって思って、帰還を決意したの。

お店ができてすぐは、あちこちから人が集まってくれて賑わうと思うけど、2、3年たって関心を持たれなくなった時、私が色々なイベント考えてお店を盛り上げたいなって思って。何もない所から作り出すものだから正直不安もあるけど、昔から何かを新しく作り出したり、企画するのも好きだから楽しみでもあるんだよね!だから気持ち的には不安半分、楽しみ半分ってところかな?(笑)

私は浪江町というより、生まれ育った請戸地区と海が好きなんだよね。よく色々な人から震災であんなにひどい目に遭ったのに!?って言われるけど、やっぱり海が好きなの。小さい時からずっと身近なものだったしさ。海が好きだからこそ、海の近くで働けるのも正直凄く嬉しいの。もちろん、やるからには成功させたいから、これからいろいろなアイディア考えていくよ!

2017年12月取材
編集者S.T

浪江町