杉下すぎした 博澄ひろすみ さん | 葛尾村

杉下すぎした 博澄ひろすみ さん | 葛尾村

かつらお胡蝶蘭合同会社

葛尾村だけでなく、福島県全体の事業として胡蝶蘭を広めていきたい

震災当時、私はアミューズメント施設「ワールド田村店」のマネージャーとして働いていました。
震災当日は丁度非番で、自宅に居た際に被災。お店が心配だったためすぐに店舗に向かい、緊急時のオペレーションに沿いながら人的被害の確認や店内の状況把握をし、自力での帰宅が困難なお客様などの送迎を行いました。
その後、葛尾村に住んでいた両親や弟と合流し、知り合いの伝手を頼り栃木県まで避難しました。当時生活をしていた田村市船引町も原発事故の影響を少なからず受けましたが、震災から一か月後の営業再開を目標に、一足先に船引町に戻り店舗のスタッフと共に準備を進めました。
被災地を支援するため、義援金の拠出や節電対策など、組織としての活動は行いましたが、私個人が地元のために動けていないことにもどかしさを感じ、より直接的に地域貢献に携わりたいと考えていました。

故郷での事業立ち上げに対する思い

私がこの事業に就くきっかけとなったのは、親類を通じて村内で「胡蝶蘭栽培に挑戦する」という話を聞いたことからでした。事業の趣旨などを伺った際とても共感し、この事業で地域を盛り立てていきたいと考え、参画を決断しました。
「かつらお胡蝶蘭合同会社」は三農家一法人が共同で立ち上げた会社なのですが、他業種で就労されていた方ばかりだったため知識や経験も無く、前段階での準備が必要でした。
会社が本格的に稼働し始める2018年1月まで、技能として必要だと思われる資格取得、胡蝶蘭そのものの勉強のため千葉、群馬、山梨などの胡蝶蘭生産地への研修に赴きました。

稼働から8ヶ月を超え、当初の想定よりも良い状態で花を咲かせられるようになりました。ただ、熱帯地域に分布する胡蝶蘭は寒冷地での管理が難しい、とても繊細な植物です。
そのため初めて迎える冬場に備え、栽培環境にはこれまで以上に配慮していかなくてはいけないと考えています。
弊社はテレビやラジオ、新聞などの報道で徐々に認知されるようになり、県内外の市場や個人からの問い合わせも増えてきました。
品質・生産量を安定させ、より多くの方に葛尾村の胡蝶蘭をお届けしていきたいと思います。

震災から7年が経過し、葛尾村をはじめとする被災地では明るいニュースが増えつつあります。しかし、月日が経つにつれて西日本や北海道など、ほかの地域でも日々災害が起きています。そのため、私たちはいつまでも被害を被った側の立場ではなく、一刻も早く立ち直っていかなければいけないと考えています。そのため、この事業も村内で留めるつもりはなく、福島県産胡蝶蘭のブランドとして「ホープホワイト」を広げていきたいと考えています。

葛尾村には利便性の悪さや山間地農業の在り方など、震災以前から抱える課題もありますが、葛尾村ならではの魅力創出に尽力している方々も大勢います。私は努力した方たちは相応に報われるべきだと考えており、先の震災で理不尽な理由で環境が変わり、それらがないがしろにされることは許せないのです。
だからこそ、弊社の取り組みが様々な人たちに認知され、地域とコラボレーションし、様々なシーンで葛尾村の魅力を伝えるお手伝いができればと考えています。

─────────────────────
かつらお胡蝶蘭合同会社
住所:〒979-1602 福島県双葉郡葛尾村大字落合字菅ノ又148-2
電話:0240-37-4380
─────────────────────

2018年9月取材
文 ・写真=S/T

浪江町