出身:楢葉町
健康に気を使いながら、地域に根付いた食堂として頑張りたい
俺が大熊町で経営してた寿司屋「一心」は、もともと知り合いが別な名前で出してたんだけど、その人が体調を崩して店閉めることになったんで、そこを借りて「一心」をオープンしました。震災の6年半前だったかな。
店を始めるまでは、浪江町にあった「寿し松」本店で6年、支店を出した富岡町では7年近く店長を務め、それから独立しました。
震災当日は店の休憩時間で、当時職人見習いで来てた若い人と女房の3人でくつろいでいるところに大きな地震が襲いました。「あれ?この地震すごいな」ってことで外に逃げたんだけど、駐車してあった車が1mくらい前後に動いててびっくりしたね。揺れがおさまってから店に戻ったんだけど、中はもうぐちゃぐちゃ。フライヤーの油はこぼれてるし魚入れてた水槽も割れちゃって掃除も大変だったよ。で、暗くなってきたから自宅に戻って一晩過ごし、また翌日店の片付けしてたら町から「すぐ避難しろ」って言われて、当時長女が住んでたいわき市のアパートに避難したんです。
女房の実家はいわき市豊間にあって、津波で家が流されたから、そこに住んでた親せきと長女のワンルームの部屋に親族10人で一晩過ごしました。13日の日、原発が2度目の爆発を起こしたとき、イチエフで働いていた親せきから「原発が危ないからもっと遠くへ逃げろ」って言われて、避難先の候補に上がった埼玉県の親せき宅に家族4人犬3匹で避難しました。
そこで一か月ほどお世話になってから、近くにできた新築の借り上げ住宅で過ごすことになったんですが、その頃何もしないわけにはいけないってことで、避難後すぐ家族4人とも職安で仕事を探してきて、俺も徒歩圏にあった老人ホームで調理師として雇ってもらいました。
いわき市にて新たに定食屋「一心」を再開
埼玉県にはそのまま住むつもりはもともとなかったかな。いつかはいわきに帰りたいと思ってました。それに義母は震災時に津波で流され、電柱につかまって何とか助かったんだけど、その頃から体調崩してしまい、病院通いしてたんです。だから福島にもこまめに足を運んでました。義弟夫婦が面倒見ていたんだけど、義母が心配で、近くに居たほうが何かしら役に立てるかと思って。
2013年の春に義弟が洋向台に家を建てたので、その家を見に行った時に女房と「(義弟宅の)この坂の先、住宅地になってるみたいだから見に行ってみるか」って話になり、その時ちょうど空き物件だった今の店舗をみつけたんです。店舗の2階もアパートになってて、そこが空き室だったから「ここに住もう」と二人で決め、同年10月にお食事処「一心」をオープンし、現在に至ります。
お客さんのニーズに合った定食屋として
新しく店を出すとき、寿司屋としてやっていこうとは考えてなかったです。寿司屋やるには魚が捌けるようなもっと大きな厨房が無いと無理だし、寿司って生ものだから食品ロスが本当に多く、儲かりそうで儲からない商売なんですよ。
今でも寿司屋だった頃お世話になった人や懇意にしてくれた人なんかが、店を再開したの聞いてご飯食べに来てくれるんだけど、寿司屋だと思って来る人も多いんです。この間も大熊出身の人が「特上寿司3人前出前して」って電話くれたり。そんな意見聞くとまた寿司やろうかとも考えるけど、今の場所では大規模な改装しないかぎり無理かな。
若い時から飲食店で働いてきて、女房や子供たちにも沢山苦労かけちゃってたから、今更苦労するのもなって考えて、この場所だったらゆとりを持って自分のペースで悠々自適に商売できるなって思ったし。
俺はもともと総菜づくりも得意で、富岡の寿し松で働いてた時も賄いを全部作ってた経験もあったので、定食屋でいこうと決めました。最初は2、3品だけ出して勝負しようと思ってたんだけど、お客さんから「○○作って」って要望あるたびどんどんメニューが増えてって、いつの間にかラーメンや餃子も作るようになりました(笑)
それから、オープン当初から設置してるんだけど、子どもたちに喜んでもらえたらという気持ちから、店内入り口に駄菓子コーナーも用意しています。
俺はもともと久ノ浜の出身で若い時に両親亡くしてるから、もう実家も無いしどこで暮らしても一緒って気持ちもあって、実は未だに骨を埋める場所って決めてないんです。
今後の目標っていうと難しいんだけど、苦労を共にしてきた女房に少しでも恩返しすることと、落ち着く場所を探すことかな。
あとはやっぱり、孫の成長が楽しみだから、毎日散歩したり筋トレしたりして、1日でも長く健康な体を維持していきたいなって考えてます。
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お食事処「一心」
〒970-0314 いわき市洋向台5-1-2
電話:0246-55-8667
営業時間:11:00~14:00 17:00~21:00(日・祝日は21:00まで)
定休日:月曜日(第1週目のみ月・火休み)
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文/写真:S/T
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