石井 秀昭 さん | 葛尾村
出身:葛尾村
11月からまた仮設内で店が再開できたときは、やっぱり嬉しかったね。
俺と父ちゃん、母ちゃん、弟の4人で経営してる「石井食堂」は、もともと俺のじいちゃんが村に定食屋出すって始めた中華そば屋から始まったんだ。東京オリンピックが開催された年にはもう店出してたって言ってたから、50年以上続いてることになるね。
2011年の震災があった日は、中学生が卒業式終わったあとお別れ会やることになってて、ちょこちょこ学生が集まってきたときに大きな揺れが来たからみんな外に逃げてったんだけど、診療所の帰りに店でバス待ってたじいちゃん・ばあちゃんたちも居て、野良猫が建物のそばに座ったまま動かないの見て「猫が逃げねぇんだったら大丈夫だっぺ」って妙に落ち着いててさ。「あぁ。これが昔ながらの知恵か」なんて変に納得したっけ(笑)
その日はもう商売にならないってなって片付けしたりして、次の日からも食堂は無理だったけど商店だけは開けてたのね。でも13日の夜に村から避難するように言われて、福島市のあづま総合運動公園に行ったあと、会津坂下町でお世話になって、その年7月にできた三春町の仮設住宅での生活を始めて、11月からまた仮設内で店が再開できたときは、やっぱり嬉しかったね。
地域密着型の食堂として
その後葛尾村の避難指示も一部解除されて、2017年の7月にまた村内で営業を再開することができ、震災前と同じとは言えないけど毎日忙しく過ごせてるのは、やっぱり葛尾村のみなさんのおかげだね!
三春町で店を開いてたとき、何人かから「うちの町で店を再開しないか」って言ってもらったりもしたんだけど、自分たちは最初から葛尾村で商売続けるって考えしか無かったんだよね。葛尾村ってもともと人口少ないうえに高齢化がどんどん進んでたでしょ。車を運転できない人だって大勢いるのに、買い物や外食する場所が隣町まで行かないと無いってすごい不便なことじゃん。人口少ない村だから、変な話「みんな身内」みたいな感覚で商売してて、頼りにしてくれる人たちも多いしさ。飲食店て、続けていくことに意味があるって俺は思うんだ。最近でこそ、低価格と盛りの良さが話題になって色んな所からご飯食べに来てくれる人増えたけど、それだって村の人たちの口コミとか色々な世代の人たちが長年通ってくれたおかげだと思うよ。
村が将来どうなっていくのかは分かんないけど、これからも地域密着型の食堂として家族と支え合い、お客さんとのつながりを大切にした商売を続けていくことが、使命とかそんなカッコイイもんじゃないけど、俺にとっては当たり前のことかな。
文/写真:S/T
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