青木あおき 裕介ゆうすけ さん | 広野町

青木あおき 裕介ゆうすけ さん | 広野町

ひろのパソコン教室 Circulation(サーキュレーション)代表
Googleストリートビュー認定フォトグラファー
出身:広野町

 

未来を担う子供たちに様々な選択肢を用意してあげたい

 

震災当時、私はホンダのディーラーで営業社員として働いていました。地震が起きた時間は丁度お客様の車を車検に出すため預かり、正内町の営業所まで運ぶ途中だったのですが、大きな揺れだったのでブレーキを踏んでいるのがやっとでした。
17時過ぎに店内の片付けなどをあらかた済ませ、自宅のあった広野町へ帰宅したのですが、余震なども続いており不安だったので、町民グラウンドの駐車場で家族4人、車中泊をしました。
その後、広野町に避難指示が出た12日に、親せきなどを頼り一旦いわき市に移動し、15日には「原発から少しでも遠くへ逃げよう」と思い、家族で会津方面へ避難しました。
会津では義母がお世話になっていた団体さんのご厚意で、団体が所有していた施設の一室をお借りできたうえ、食事なども提供していただけたので本当に感謝しています。
そこに一か月ほどお世話になったのち、会津若松市の借り上げ住宅に引っ越したのですが、3月いっぱいで会社を依願退職し、職業訓練校に通うことにしました。実は会津に避難した際、会社側から(会津へ)異動の打診もあったのですが、これを期に次のステージへ進みたいなと考えたからです。
私はもともと独学でパソコンを勉強しており、それを活かした仕事をしたいと考えていたのですが、ただ「パソコンができる」と言っても資格や実績が無いと不利じゃないですか。そのため、訓練校で資格取得を目指したんです。

 

お世話になった会津の魅力を発信したい

 

 

映像広野町役場 庁舎内 提供:青木裕介さん

 

私と家内は生まれも育ちも広野町です。ですから、2人で話し合っていつかは広野に帰ろうと考えていました。そのため、避難先では緊急雇用制度を利用し、2012年3月までと期限が決まっていた民間で立ち上げられた職業訓練校にパソコンインストラクターとして入社しました。当初は半年間の予定で雇用されたのですが、自分の能力をかっていただき、センター長として研修部門を統括し、就職支援などに従事し、2018年5月に帰町するギリギリまで勤め上げました。
ちなみに「会津の三泣き」って言葉はご存知ですか?会津では閉鎖的な人間関係にまず一泣きし、生活に慣れてくると情の深さに二泣きするのです。そして会津を去るときには、情の深さに心を打たれ、離れがたくて三度目の涙を流すと言われています。
まさしくこの言葉の通りで、会津の方々の温かさには、今でも感謝の意しかありません。そのため、お世話になった会津の魅力を発信したいと考え、グーグル認定代理店と提携を結び「ストリートビュー認定フォトグラファー」の資格を取得し、会津の街並みや風景などを撮影し、サイト上で紹介していく活動も1年ほど前から始めました。今後は広野町を始めとした浜通りでも幅広く活動範囲を広げていけたらと考えています。

 

広野町の子どもたちが一つでも多くの選択肢を持てるように

 


ひろのパソコン教室

 

また、現在私は広野町の一軒家をお借りして「ひろのパソコン教室」を立ち上げ、ジュニアからシニア世代まで幅広くパソコンを教えています。
今って、私たちの時代と違って子どもを取り巻く環境ががらりと変わってしまいましたよね。核家族化が進んで、おじいちゃん、おばあちゃんたちと触れ合う機会もかなり少なくなってしまったように感じるんです。
私は小さい時からおじいちゃん、おばあちゃん子で、今でも広野町を歩いていると近所の方から「裕介君かい?大きくなったねぇ」なんて声をかけられて、本当に嬉しいんです。それこそ、広野町のシニア世代全員が自分の祖父母だって思えるくらい大好きです。
この教室の場所を選んだ理由の一つでもあるのですが、お子さんからお年寄りまでが自由に出入りでき、リラックスした空間で和やかに授業ができたら、子どもたちはシニア世代ならではの知恵を学べるし、シニア世代は孫感覚で子どもと触れ合え、お互いにエネルギーが貰えるのではないかと考えたからです。

 


教室では「ジュニア・プログラミング検定」の資格取得もできます

 

さらに当教室はジュニア向けの資格の一つである「ジュニア・プログラミング検定」の取得認定会場にも指定されています。
これからの将来、仕事などでもパソコンを利用する確率はとても高くなります。子供たちは吸収力があるので、早いうちからパソコンとふれあうことで、段階的にパソコンスキルを上げられ、楽しく資格取得ができる内容になっています。

広野町は震災後、本来あった場所や空間がなくなってしまいました。だけど、それに代わる思い出作りのお手伝いをしたいなと考えています。自分の生徒が将来「広野で育ったからパソコンができる」「やっといてよかった」と思えるような支援をこれからしていきたいと思います。
ただ、パソコン教室だけで終わらせるつもりはありません。これまで自分が培ってきた能力を活かし、若い世代にチームワークやコミュニケーション能力、問題解決思考を高めていけるような人材を育てていければと考えています。
そのためには、自分自身も常に成長していかなければいけません。「相手に何を伝えたかではなく、何が伝わったか」を大切にしながら日々努力していきます。

 

2018年7月取材
編集:S/T
トップ画提供:青木裕介さん

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