標葉郷野馬追祭り(2018)

標葉郷野馬追祭り(2018)

「相馬野馬追8年ぶりの浪江からの出陣!」

「将門、関八州を領してより、下総国葛飾郡小金ヶ原に馬を放ち、年々春夏秋二度も三度も、八カ国の兵を集め、甲冑を帯し、大群を学び、野馬を敵となして、軍法備えの次第、駆引の自由、馬上の達者、機変自在の動きを試む」相家故事秘要集に見える、相馬野馬追の起源です。一千有余年の歴史を誇り、天明・天保の大飢饉や東日本大震災及び福島第一原子力発電所の事故を乗り越え、紡がれてきた相馬野馬追が今年も勇壮に開催されました。

「標葉郷からのご出陣!」

そして今年は、標葉郷(浪江町、双葉町及び大熊町)の騎馬武者56騎が、東日本大震災後初めて浪江町内でのお行列を再開し、その勇姿を再び拝見することができました。
7月28日は浪江町の中央公園を出陣後、JR浪江駅前、新町通りを経由して商工会館前までをお行列。8年ぶりの町内お行列を一目見ようと、多くの方々が早朝から標葉郷本陣や沿道で拍手と歓声をもってお出迎え。震災前のかけがえのない風景がまた一つ甦った感動の瞬間でした。その後、小高神社(南相馬市)で小高郷と合流し、本陣のある雲雀ヶ原(南相馬市)にご参陣。今年は標葉郷からの出陣ということもあり、標葉騎馬武者の方々の気合も充実しています。そして本陣にて総大将 相馬行胤(みちたね)公をお迎えし、宵乗り競馬が執り行われました。白鉢巻に陣羽織という出で立ちで古式再現の宵乗り競馬は、勇壮さや荒々しさとともに荘厳さが伝わってくる、初日のハイライトです。

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標葉の地からの出陣  山本幸輝

今年で10回目の相馬野馬追の出場になりました。野馬追には出場騎馬武者やその関係者ならではの楽しさがあります。 
今年は震災から8年が経ち、ようやく標葉郷の陣屋を構える浪江町からの出陣が叶いました。地元から出陣できることに、震災後7回の野馬追にはなかった嬉しさが込み上げました。
出ている人にしか味わえない楽しさの一つに、帰り馬があります。2日目の本祭り終了後、各騎馬武者が自分の家へ馬で帰ります。中学1年生当時、乗馬の技術もあまりなく約5キロの帰り馬は大変でした。父と並びながら帰った、カエルが鳴く田んぼ道と雨が上がって射す夕日の景色。震災後、思い出すのは決まってこの記憶でした。「もう一度帰り馬で浪江の家に帰りたい」、その気持ちが毎年出場するエネルギーでした。
また、野馬追では出場騎馬に役割が与えられます。自分は法螺貝(ほらがい)を吹く螺役(かいやく)で近年出場させて頂いていますが、この螺役の仕事をしている時間がとても好きです。螺役同士の会話も自然と増え、人からもまた野馬追が好きになります。
そして、最後に伝えたい野馬追の良さがあります。それは野馬追という祭りが標葉の地域や人々、野馬追を見にくる人たちの絆を繋いでいるということです。千年以上続く歴史を築いてきた数々の思いが、今も受け継がれているからこそ、絆が繋がっていくのだと感じます。標葉での野馬追復活を支えてくれた一人一人に感謝しながら祭を継続して行けば、その先に地域の未来も自ずと見えてくると思います。ですが、まだ全ての騎馬武者が故郷を取り戻したわけではありません。標葉全騎馬が、浪江、双葉、大熊、それぞれの地から再び出場できる日まで、皆で力を合わせて頑張っていければと思います。

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