「双葉郡未来会議 season7 ~特集!牛たちの行方~」開催レポート 2

「双葉郡未来会議 season7 ~特集!牛たちの行方~」開催レポート 2

旧警戒区域から現在までの流れ/谷さつき

 半径20キロ圏内が警戒区域として設定されて1年間、赤いところは牛の避難が禁止されていました。青いところの避難指示区域、黄色いところの計画的避難区域、この2つは牛の避難が可能で皆さん行政と協力しながら、率先して行われていました。赤いところについても独自の救出が行われました。牛農家の方が3,385人、280軒の方でやっていました。2011年3月11日に避難指示が発令され、「指示」は「命令」と違って拘束力はありません。そのため避難先から通ったり、双葉郡に住み続けて飼養管理をしていたりした方が大変多かったです。それから同年4月22日に警戒区域が設定されました。強制避難になります。(牛の)餓死、事故死などが始まりました。どんどん餓死していく様子を農家さんたちが大変心を痛めて何とかしてほしい、という声が県に寄せられて、福島県から国へ動物愛護の観点から瀕死の家畜を安楽死させるように求めました。それを受けて5月12日に国が飼い主の同意があったものは安楽死させよ、と指示しました。同意がないものはその時はまだ何も指示がない状態で、翌年の2012年に具体的な飼養管理の基準が出されることになります。空白期間がとても長かったため、各町がいろいろと取り組みをしていくことになります。

 「動物愛護」を動機として安楽死処分が行われたものですから、元気なものはどうするんだということもあり、浪江町は安楽死の説明会が大変紛糾しまして、同意はなかなか取れなかった。

  南相馬市の桜井市長。桜井市長は元々酪農家でした。生き残った馬たち、全体の3分の1程度いたんですけれども、それを避難させました。牛のほうも模索していました。富岡町は農大出身の町長がいて、牛を全頭生かす、という宣言をされました。牛を生かす方法について各町村、模索していくことになります。同意があったもののみが殺処分の対象になるのですが、細かい話は緊急時に伝わりにくいものなので、「一律殺処分」と思われてしまったところがあります。また農水省のホームページに安楽死したものについては賠償金が出るという発表がされたのですが、安楽死をさせないと賠償金が出ない、というふうに対象の地域では思われてしまいました。それからまだ国は安楽死を求めているという誤解もありますが、特措法の有効期限というのは警戒区域がある時だけです。その後、指示が変更されて飼養管理基準が出されまして、実際に飼養管理が継続されています。

 誤って出荷される危険性があるという誤解は、日本の牛には「牛証」という耳タグがついており、このシステムは大変優秀でして、被災牛だということは屠畜されるまでの間に確実にわかるようになっています。そのため被災牛が出荷される危険性はありません。

 2011年に多くの農家さんたちが要望をし、現在の復興大臣の吉野議員が千頭ぐらい国として生かすべきだ、被災地が大混乱だからこそ、余力のある国やほかの地域で率先して何かしなければいけない、ということを訴えてくださいました。それで牛用の立入許可証が出されるようになりまして、餌付けや柵作り、囲い込みが始まります。牛が逃げている間に植木を食べたり、庭に糞を落としていったり、交通事故があったりしたんです。そういったものを防ぐためにも、農家さんたちは立ち入りをしなきゃいけない、と。迷惑かけて申し訳ない、という気持ちがすごくあったんです。だから殺処分に同意した人も多かったんですけれども、そうではなくて囲い込みをしたい、牛を皆さんのお役に立つようにしていきたい、ということでやっていらっしゃった方々も多いです。真っ先にしたことは、牧場の数がすごく限られていまして、一から自分たちで杭を打って柵を作っていきました。それですぐに囲いこみました。

 2012年4月に警戒区域が解除/再編され、安楽死の指示も変更されました。通いが可能となった農家の飼養基準が明文化されました。また2013年に福島県の意見が反映されて、飼養管理がよりやりやすくなりました。それから相双家畜保健衛生所のほうで定期検診も行っています。農家さんたちは自分たちで飼養を継続できました。有事の時って何らかしらの法律があったとしても、すぐ機能することではないということで、最後のほうで吉野大臣への要望項目に入れたいと思っています。

 放射能については皆さんのイメージと異なるところがあるかもしれません。土や草、牛の出す糞について調査をしました。汚染されたところに生えてくる草、希望の牧場、山本牧場、松村牧場、池田牧場、もーもーガーデン、それぞれセシウム134、137を合わせた除染前の放射線濃度について調査しました。大体1万を超える値が確認されています。それを除染すると減ります。減っても農地の低減率は、だいたい8割です。残りの2割くらいは残ります。

 懸念された牛の糞はどれくらいなのか、というと水分を100パーセント含んだ状態で換算すると、大体100から300くらいの間です。土地はこれくらいのところにこれくらいの水濃度の糞が落とされることによって、この程度汚染されます。牛の糞というのは土に還るんですけれど、例えば3,000ベクレルある土の上に100ベクレルだったりする牛の糞が落ちたとします。それが土に還るので、濃度は薄まります。つまり被災牛がいても放射線濃度というのは高くなることはないと考えられます。それから土から生えてくる草なんですけれども、そこにも含まれています。それを牛が食べて同じ分のセシウムを土に落としていくことで循環していますので、被災牛を除染後の復興拠点に置いておいても、汚染のレベルは全く変わりません。

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