双葉郡教育復興ビジョン

双葉郡教育復興ビジョン

全国や世界で活躍できる人材を育てることを目的として福島県双葉郡の8町村が協働で取り組む「双葉郡教育復興ビジョン」の推進プロジェクトで、全体のマネジメントを担当する赤司典子さんよりご寄稿頂きました。

双葉郡教育復興ビジョンの活動
赤司展子(元双葉郡教育復興ビジョン推進協議会スーパーコーディネーター)

ふたば発、教育イノベーション
 人と人がつながって教育復興は実現していく、ということを示してくれた人がいます。2014年8月に私が着任した当時、東日本大震災復興支援財団の専務理事だった荒井優さんは、地域でも教育現場でも広く深いネットワークを築いていて、それを私にも惜しみなく開いてくれました。そしてそこからつながった双葉郡の人たちも、誰かとつないでくれました。つながり、絆、連携、これらが双葉郡の教育復興のキーワードであるように思います。

 子どもたちが被災・避難経験を乗り越え、夢へ向かって未来を切り拓いていってほしい、それが8町村の教育長が中心となって策定した「福島県双葉郡教育復興ビジョン」に込められた思いです。双葉郡独自の魅力的な教育、地域や多様な人々との協働、教育を通じた絆づくり、の3つの柱をふまえて、郡として連携する段階で東京から来たのが私と、同じくコーディネーターの山中藍さんでした。ビジョン推進協議会の事務局メンバーと郡内各校の先生方、そして地域の方々と共に、様々な活動を企画し実施してきました。
 「ふるさと創造学」は、ビジョンをもとに生まれた学習で、地域のヒト・モノ・コトから子どもが感じる疑問や気付きを起点に、分かったこと考えたことをまとめ発信します。8町村の小中高校では個々の環境や特色を生かしたそれぞれの「ふるさと創造学」が行われていて、それを地域の人や専門家が支えています。例えば浪江町の小学校では、郷土料理の紅葉汁づくりを体験。現在学校がある二本松の郷土料理も同様に体験し、共通点や違いを知ると同時に、地域に根ざした食に込められた思いについて考えます。また12月に開催する「ふるさと創造学サミット」では、双葉郡の小中高校が集まり各校の成果を伝え合います。個々の学校で感じていた地域とのつながりが、町村や学年を超えて広がる機会です。
 夏休みの8町村合同交流会も、双葉郡の絆を深める場となっています。小学生は町村混合チーム対抗でゲームをします。中高生は、プロの講師によるワークショップに他町村の子と一緒に参加します。みんな初めは緊張気味ですが次第に打ちとけます。交流会は今年で3年目ですが、少し恥ずかしそうに再会を喜ぶ顔も見られるようになりました。
 こういった地域とのつながり、子ども同士のつながりをサポートするために、双葉郡地域学校協働本部という組織があるのをご存知でしょうか。各町村にいる地域コーディネーターが連携して学校と地域や企業をつなぎ、子どもたちの学びの場を広げています。これは大人たちの知識や経験を活かし、町村や世代を超えた交流を生む場にもなっています。教育でイノベーションを、これは私が勝手につけた双葉郡教育復興のキャッチコピーです。一見ふつうの連携や協働をベースとしていながら、実はまさに双葉郡ならではの取組で、変化を生み出していると確信しています。ぜひ多くの人に共感し協力してもらいたいと思います。

「福島県双葉郡教育復興ビジョン推進協議会」のHPはこちら