「双葉郡未来会議 season2 〜葛尾・富岡・浪江編」 開催レポート

「双葉郡未来会議 season2 〜葛尾・富岡・浪江編」
開催レポート

 2016年3月19日、「双葉郡未来会議 season2 〜葛尾・富岡・浪江編〜」を開催しました。第2回目の開催となる今回の会場は、郡山市。約150名の方にご参加頂きました。避難解除が予定されている葛尾村と富岡町、浪江町の現状報告が今回のメインです。

司会は、藤田大さん(富岡町)と牛来美佳さん。牛来さんは浪江町出身のシンガーソングライター。「いつかまた浪江の空を」を代表曲に、県内外で活躍中です。イベントの冒頭、その美しい歌声を披露してくださる場面も。藤田さんとの掛け合いが、会場の参加者を和ませます。

司会を務めた藤田さん(写真左)と牛来さん。

各町村の現状報告

画像をクリックすると報告内容の詳細をお読みいただくことができます。

はじめに、渡辺和則さん(富岡町)から双葉郡全体の情報共有があったのち、3町村の現状報告に移りました。報告をしてくださったのは、下枝浩徳さん(葛尾村)、前司昭博さん(浪江町)、佐々木邦浩さん(富岡町)。では早速、その内容を振り返って参りましょう。

—地域のことは地域の人がなんとかする:下枝 浩徳さん(葛尾村)

人口約1,500人、双葉郡内で最も人口規模の少ない葛尾村。豊かな自然に囲まれ、四季折々、美しい景色を堪能することができます。雄大な自然を遊び場にして育った下枝さん、現在は自身が設立した社団法人で「地域コーディネーター」として地域の活動をサポートしています。その活動の経験も含め、村の現状を報告してくれました。

今年の6月に避難解除が決まっている葛尾村、帰還する人口は200〜400人前後と予想されています。これが絶望的な数字なのかどうか、県内外の小規模自治体とも比較して「決して悲観的になる数字でもないのかな」と下枝さん。しかし、気がかりなのは帰還が予想される若者の少なさ。長い目で見た時、将来の担い手となる若者・子供が減少するということは、村の存続に関わる大きな課題になるのではと案じています。

ある知人は、下枝さんにこんな問いかけをしたと言います。「お前の村は別にいらないんじゃない」。半分、わかるような気もしたが、半分、腹が立った。 …「自分が生まれたところをいらないと言われていいのか。本当に、俺の村はいらないのか。活動を続けることで、その問いに対しての答えを求め続けているんです」。

下枝さんは最後に “父をはじめ、地域と共に命をつないできた祖先たちがいた”村を存続させたい、この村で生きていきたい、と力強く語りました。

—震災後に出会った方々との人脈を使い、ふるさとの復興に寄与する:前司 昭博さん(浪江町)

浪江町と聞いて、皆さんは、何を想像するでしょうか。第8回B-1グランプリでゴールドグランプリを受賞した「なみえ焼そば」は、いまや浪江町の名物として大変有名ですよね。そのなみえ焼そばを媒体とするまちおこし団体「浪江焼麺太国」をはじめ、「浪江町商工会青年部」「浪江青年会議所」等で活躍する前司さんが、浪江町の現状報告と活動報告をしてくださいました。

浪江町が当初掲げた復興ビジョンは、子供向けのアンケートで寄せられた声等を中心にまとめられたそう。前司さんの心に響いたのは、子供たちの「帰りたい」という言葉。この声を受けて、自分たち大人たちは何ができるのだろうと考えはじめたと言います。

また、復興まちづくりの目指す姿については、「自分たちの町だけではなくて、“双葉郡として”どのように復興していくのかという視点が必要であり、そのためにはそれぞれの町村がどの役割を担うべきかを考え、復興を目指していくべきではないか」との思いを語りました。

「震災後に出会った方々との人脈を使い、ふるさとの復興に寄与したい。そうすればいつか、ふるさとは必ず復興すると確信しています」震災後、様々な活動を通して、県内外の人との繋がりを築いてきた前司さんは最後にこう力強く宣言しました。

—「どの道を選んでも」:佐々木 邦浩さん(富岡町)

富岡町の現状報告をしてくれたのは、佐々木さん。同町役場職員として、そして、二人の子供を持つ父親でもある、町の一住民として、それぞれの視点から町の状況や復興への思いを語ってくださいました。

佐々木さんが掲げる復興のキーワードは、役割分担と人の復興。ハードの復興は行政の得意分野、しかし、ハートの復興は苦手。だからこその役割分担、ハートの復興は住民が力を集めていまできることを確実にしていくことが重要と言います。

富岡町復興の羅針盤ともいえる「第二次復興計画」では、「帰る」「帰らない」の二者択一ではなく、「今は判断できない(しない)」という第3の道を含めたあらゆる町民の意向を尊重すること、また、新しい住民・仲間も増やしていくことを基本姿勢としています。これは、公募した町民委員とおよそ100時間かけて議論したそう。復興計画の実現に向け、「ふるさとの復興」と「心の復興」を両輪として町は各種政策に取り組んでいくと説明しました。

参加者の心に残ったのは「どの道を選んでも」という言葉。復興という巨大な目標に向かう方法は何百通りもあるが、その全ての道、考え方を尊重するというような意味がこの言葉に込められていると言います。「どの選択肢を選んでも、批判したり足を引っ張ることはせず、互いの考え方を認め合いながら、みんなで復興を目指すことが、本当の復興の姿ではないか」。佐々木さんの語りかけに大きく頷く参加者の姿が会場のあちこちで見受けられました。

3町村からの現状報告の後は、「ふるさと未来創造会議」さんの活動報告とパネルディスカッション。

「双葉郡未来会議」とよく似た名前の「ふるさと未来創造会議」は、浪江青年会議所の事業のひとつ、北双エリアと呼ばれる浪江町、双葉町、大熊町、葛尾村を対象に活動をしています。今後、互いに連携を深めることで活動が発展していくことを期待して、活動報告をしていただきました。

報告がひと通り終えた後、3町村の報告者とふるさと未来創造会議の近野さん、双葉郡未来会議の代表・平山を交えて、パネルディスカッションを行いました。ディスカッションの進行は、小林直樹さん(浪江町)が務めました。ディスカッション後、参加者からの質問に壇上の報告者がこたえる場面も。

そして、内容盛り沢山の報告・パネルディスカッションの後には、会場内の展示物を観覧したり、参加者同士が繋がる交流会の時間も設けました。

大盛況のうちに幕を閉じることができた今回の本会議。参加してくださった皆さん、本当にありがとうございました。参加者の皆さん同士が繋がり、ともに新たな一歩を踏み出せることを期待しています。

次回「双葉郡未来会議 season3 〜大熊・双葉編〜」の開催については近日詳細を公開いたします、お楽しみに。