「双葉郡未来会議 season1 〜広野・川内・楢葉編」 開催レポート

「双葉郡未来会議 season1 〜広野・川内・楢葉編」
開催レポート

2015年12月5日、いわき市にて「双葉郡未来会議 season1 ~広野・川内・楢葉編~」を開催しました。
2015年夏に「双葉郡未来会議」を発足して以来、はじめて開催した本会議です。この日は広野町・川内村・楢葉町3町村にスポットライトを当て、震災・原発事故後の経過と現状に迫りました。

広い会場の後方には、展示ブースも用意。双葉郡8町村、双葉警察署、双葉地方広域市町村圏組合消防本部、いわき明星大学震災アーカイブ室、いわき海洋調べ隊「うみラボ」にご協力頂いて、震災後のまちの様子や復興の進捗状況がわかる写真・資料を展示しました。地震と津波、時間の経過によるまちの荒廃…。双葉郡内の被害の大きさを改めて認識するとともに、復興作業の進歩を目で見て確認する機会になりました。

はじめに、名嘉陽一郎さん(富岡町出身)から双葉郡全体の情報共有があったのち、3町村の現状報告に移りました。

3町村の現状を報告してくれたのは遠藤 浩さん(広野町)、井出健人さん(川内村)、鈴木教弘さん(楢葉町)。それぞれのプレゼンテーションの後、パネルディスカッション形式で3町村の共通点や違いについて理解を深めていきました。

今回のテーマは「避難解除とは何か」。3町村はいずれも、原発事故直後にいったん全住民が避難を強いられましたが、現在では避難指示が解除され(川内村の一部を除く)、希望する住民は戻れるようになっています。住民にとって解除とは何か、解除でまちは元に戻ったのか…。避難指示が今もなお続き、解除を待つ他町村の人たちにとっても、注目を集める内容になりました。

広野町に戻って暮らす遠藤さんは、解除後の帰還とは「生活を制限される地域に帰ること」だと表現します。震災前にあった商業施設が営業をやめたことによる買い物の不便さ。失われた商店街などのにぎわい。原発の廃炉や除染で働く作業員が住むことに対する、住民の不安感や居心地の悪さ。「戻れる」まちでも、新たな課題が山積していることを語ってくれました。
普段は楢葉町職員として働く鈴木さん。町の復興計画を読み解きながら、商業・産業・交通インフラの整備を重点的に進める方針を説明しました。しかし、たとえインフラが整ったとしても、その土地の文化や歴史への住民の愛着や思いがなければ、人々のコミュニティーは成り立ちません。鈴木さんはお祭りなどの伝統文化の継承を挙げ「行政だけでは限界があり、住民主導の取り組みも大切だ」と指摘しました。

3町村にはどれだけの住民が戻っているのでしょうか。広野町(人口5,143人)が約4割、川内村(2,754人)が約6割、今年9月に避難指示を解除したばかりの楢葉町(7,364人)では1割未満に留まっているのが現状です。
川内村に既に帰還している井出さんは、「友人や他村民に対して『何で戻ってこないのか』と思わない日はない」。率直な胸の内を明かしながらも、あくまで判断をするのはその人自身でなければならない、と強調します。「『自分が戻ってきているんだから、お前も戻ってこい』はダメだなと思うんです。もちろん、その逆もアリです」。一人ひとりがその選択と決断を迫られているなか、誰がどう決断に寄り添えるかが問われています。

地域を「元通り」に戻すことは難しい。それでも、帰還できるようになったことで「地域の仲間と築き上げてきた誇りを取り戻すことへのスタート」を切ることができた、と遠藤さんは言いました。3人の言葉にはいずれも、「自分たちの地域を自分たちで考え、つくりあげていく」ことの大切さと誇りがこめられていました。

その後のパネルディスカッションでは、双葉郡未来会議代表の平山勉さんを交えて意見を交わしました。参加者から「会場にいる他の町村の人の声も聞いてみたい」との声を受けて、大熊町出身の女性がマイクを握る場面もありました。

会の終わりには、来賓として来ていただいた福島県議会の橋本徹議員、川内村の遠藤雄幸村長、広野町の遠藤智町長、東京電力福島復興本部企画総務部長の望月純夫さんから感想をいただきました。

本会議終了後、参加者の皆さんへのアンケートでは「避難指示が解除された地域の現状が知りたくて参加。今後、避難が解除される町として、参考になった」「双葉郡のことに関わりたい気持ちがありつつ、一歩を踏み出せずにいたので、いいキッカケだと感じて参加した。今後も参加したい」との声を頂きました。また、「参加者が聞くだけでなく、対話する機会があると良かった」といった意見も多く聞かれました。つながりが生まれることへの期待を強く感じました。

「双葉郡未来会議 season1 〜広野・川内・楢葉編〜」にご参加頂いた120人を超える皆さま、本当にありがとうございました。

次回、富岡町・葛尾村・浪江町編は2016年3月19日(土)に開催いたします。今回参加してくださった皆さまも、参加できなかった方も、3月19日にお会いしましょう。